日本公認会計士協会が実施する品質管理レビューとは何か?公認会計士監査審査会が実施する検査とは異なるのか?

監査法人に所属するパートナーにとって厄介な存在、それが日本公認会計士協会が実施する品質管理レビューです。

むろん、きちんと監査業務を実施しているのであれば、レビューを受けたとしてもなんら問題はないはずです。

しかし、実際の監査業務を行なっている、あるいは行なった経験のある会計士であればわかると思いますが、全ての監査業務について全く瑕疵なく監査を終了させることなんていうのはかなり厳しいと思われます。

とはいえ監査に対する社会的な目線がどんどん厳しくなる昨今においては、上記のような考えは甘いと思います。

そこで本稿ではいままでそんなに解説がなされてこなかったであろう「日本公認会計士が実施する品質管理レビュー」についてその概要をご説明したく思っております。

とりわけ、会計監査人の監査の妥当性について検証を行う必要がある監査役の方などは一読されると参考になろうかと思っております。

品質管理レビュー制度とは?

品質管理レビュー制度とは日本公認会計士協会の品質管理委員会が運営している監査の品質管理の状況をレビューする制度のことです。

この品質管理レビュー制度について理解しておく必要がある事項としては、この品質管理レビューの結果は公認会計士監査審査会に対して状況報告がなされるものであることです。

つまり、品質管理レビューは同業の集まりである公認会計士協会での身内のなかの対応なので甘い対応がなされているのではないかという指摘は当たらないということがいえます。

品質管理レビューの種類

品質管理レビューには、①通常レビューと②特別レビューの二つがあります。

種類 レビューの内容 実施頻度 レビュー対象監査事務所
通常レビュー 監査事務所全体の品質管理の状況を対象として、定期的又は機動的に実施するものです。 3年に1度(大手監査夫人は2年に一度) 公認会計士法上の大会社等および一定規模以上の信用金庫等を監査している監査事務所
特別レビュー 監査に対する社会的信頼を損なうおそれがある事態に陥った場合に、当該事態に関係する監査事務所の特定の分野又は特定の監査業務に係る品質管理の状況を対象として、臨時的に実施するものです。 監査に対する社会的信頼を損なうおそれがある事務所 監査契約を締結している全ての監査事務所

 

品質管理レビュー報告書および改善勧告書の交付

品質管理レビュー報告書

品質管理委員会は、通常レビューを実施した結果に基づき、監査事務所の品質管理のシステムの整備および運用の状況に関する結論を記載した品質管理レビュー報告書を作成し、監査事務所に交付します。

通常レビューの結論は3つありまして、①「限定事項のない結論」②「限定事項付き結論」③「否定的結論」のいずれかが表明されることになります。

結論の種類 内容
限定事項のない結論 通常レビューを実施した結果、監査事務所の定めた品質管理のシステムには、品質管理の基準に適合していない重要な事項がないと認められ、また、レビュー対象期間に属する日付を付して作成した監査報告書に係る監査業務において、監査事務所の品質管理のシステムに準拠していない重要な事項がないと認められた場合に表明される。
限定事項付き結論 通常レビューを実施した結果、重要な事実が見受けられ、そのために監査事務所が実施した監査業務において職業的専門家としての基準及び適用さえる法令等に対する重要な準拠違反が発生している相当程度の懸念があると認められた場合に表明される。
否定的結論 通常レビューを実施した結果、重要な事実が見受けられ、そのために監査事務所が実施した監査業務において職業的専門家としての基準及び適用される法令等に対する重要な準拠違反が発生している重大な懸念があり、かつ、個別業務において職業的専門家としての基準及び適用される法令等に対する極めて重要な準拠違反があると認められた場合に表明される

改善勧告書

監査事務所の品質管理の向上に資する改善の必要な事項がある場合には、改善勧告書を作成し、品質管理レビュー報告書とともに監査事務所に交付することとなっています。

ちなみに、この改善勧告書は品質管理レビュー報告書の結論が「限定事項のない結論」出会った場合でも改善が必要と判断された場合には交付されることになります。

これを受領した監査事務所は改善計画書を作成し、改善勧告事項に対する改善措置を報告することが求められます。

フォローアップ・レビュー報告書の交付

品質管理委員会は、改善勧告書を交付した監査事務所について、改善措置の状況を確認するために、翌年度にフォローアップ・レビューを実施し、確認結果を記載したフォローアップ・レビュー報告書を監査事務所に交付することになっています。

上場会社監査事務所登録制度とは?

上記の品質管理委員会内に上場会社監査事務所部会を設置しており、上場会社監査事務所名簿などを備え、この名簿への登録の可否や登録に関する措置の決定を品質管理レビュー制度に組み込んだ制度として運用しています。

なお、この上場会社監査事務所登録制度は、各証券取引書の有価証券上場規程等では、上場会社の監査人は、上場会社監査事務所名簿又は準登録事務所名簿に登録されている監査事務所でなければなりません。

そのため、この名簿からの登録が外されてしまった場合は上場会社の監査を担うことができなくなります。

 終わりに

日本公認会計士協会による品質管理レビューの制度についてお分りいただけたでしょうか。

ここからは私見となりますが、公認会計士協会の品質管理レビューは監査の品質向上に一定程度の貢献はしているものと思います。

しかし、中には非常に細かい指摘や制度のための制度、というような実務的にバランスを欠いた指摘が存在することもまた確かです。

監査の品質を向上させ、内外の投資家に信頼性のある、また投資判断に資する情報を提供するためにも、実質的な指摘を行うべきであり、いたずらに細かい重箱の隅を突くのような指摘を行うこととのないようにしていただきたく思っております。