会計上発生するのれんは税務上損金算入することができません。
しかし、税務上で発生するのれんについては損金算入が可能です。
この税務上ののれんである「資産調整勘定」については、あまり知られていないかもしれません。
むろん、日常的にM&Aをしているような方であれば、「資産調整勘定」についてはすでにご存知であることが多いでしょう。
ここでは、そのような方ではなく、普段は日常の経理業務のみをしているような方やあるいは会計士で普段は変化がなくM&Aなどがないようなクライアントを担当しているような方に対して、税務上ののれんなんていう概念があるんだよということを理解してもらい、頭の片隅にインプットしてもらうことを目標とします。
Contents
税務上ののれんである資産調整勘定とは?
税務上ののれんである資産調整勘定を理解するためにはステップを踏む必要があります。
ここでは順番に沿って資産調整勘定をきちんと理解できるようにしていきますね!
まずは税制適格の概念を理解しよう!
簡単に言えば、税務上で発生するのれんのことです。
と、これではわかりませんよね笑。というか全然説明していないですよね笑。
資産調整勘定を理解するためには、税務上には「税制適格」という概念を理解する必要があります。
税制適格とは、一定の要件を満たした際に税制が認めてあげた、ある種の例外と考えるとわかりやすいと思います。
つまり、本来は税制の理屈や基本的な考え方、趣旨からすると、こうなるべきなんだけど、そうすると、ちょっと納税者に酷である場合や趣旨に反するような納税者までをも不当に損をさせてしまうような懸念がある場合に、一定の要件を満たしているのであれば、原則的な取り扱いではなく、税制上のメリットを享受させてあげましょう、というのが税制適格の考え方になります。
税制非適格組織再編について
税制上ののれんについて理解するための次のステップは、税制非適格組織再編について理解することです。
先ほどの税制適格のところで理解できたかもしれませんが、
ちょっと応用論点_組織再編税制で達成したいこと
組織再編税制はなぜ作られたのでしょうか?
これは制度趣旨とも言われるものです。
税制は基本的には課税の公平性や制度がないところで何らかのスキームを悪用することで不適切な節税が行われている場合において、そのような状況を是正するために、新たな規制を導入します。
このことは組織再編税制についても同様です。
資産調整勘定が生じるスキームを列挙します
まず理解する必要があるのは、税務上ののれん(資産調整勘定)が生じることになるのは非適格組織再編か事業譲渡を絡めたケースであるということです。
単純に会社の株式を売買した場合は、資産調整勘定は発生しないので、のれん償却の損金算入はできません。
ここでは実務においてよく使われるスキームについてご紹介させていただきまして、より詳細なスキームのご提案などに関しては別途ご連絡をいただければと思います。
非適格分社型分割スキーム(スピンアウト取引)
これは、買収対象会社の株式を取得するのではなく、買収会社の一部である事業をまずは会社分割(新設分割)によってスピンアウトしてから、その新設された会社の株式を取得する方法です。
この場合、会計基準では、この取引は簿価承継されるのですが、税務では新設分割された時点で将来その新設分割された会社の株式を第三者に移転することがわかっている場合は、税制適格要件を満たさないことになるので、税制非適格となり、時価での承継が行われることになります。
そのため、買収対価と新設分割された会社の税務上の純資産の金額の差分が税務上ののれん(資産調整勘定)として計上されることになります。
また、このスキームの場合は、売り手にもタックスメリットが発生するように組成することも可能です。
M&Aの交渉において、重要なのは自社の利益のみを押し付けるのではなく、可能な限りWINーWINな交渉を行うことにあります。
むろん、自社の利益を追求することは自明です。
しかし、それのみではまとまるものもまとまらなくなってしまいますよね。
そこで、相手側にもこのスキームを利用することでタックスメリットが生じるということを説明することができれば、このスキームを利用することについての賛同を得やすくなるものと思われます。
事業譲渡