IFRSを適用した会社の四半期報告書における注記の必須項目についての考え方

IFRS任意適用会社が増加しています。

IFRSを適用した場合、日本基準よりも開示項目が増加するということは周知の事実かもしれませんね。

しかし、年次財務諸表における開示が増加することはわかると思いますが、四半期報告書における取り扱いとなると、少し自信がないという方は少なくないんじゃないでしょうか。

そこで本稿では、IFRS適用会社における四半期報告書の留意事項を取りまとめて見ようと思います。

IFRS適用会社に必要な注記について金融庁の開示例に記載されている事項をまずは確認する

 

金融庁がIFRSを適用している会社の四半期報告書において、IFRSに基づく四半期連結財務諸表の開示例として必要な開示項目を列挙しています。

まずはここに記載されている項目については必ず開示が求められているということを理解しておきましょう。

むろん、正確に言えば、金融庁も開示”例”を示しただけですので法的な意味合いではマストではないのかもしれませんが、実務的には金融庁が公表した開示例は大きな意味合いがあることになります。

したがって、実質的には、マストの項目であるという理解をすることがベターです。

では、どのような項目が該当するのでしょうか。

<四半期報告書で必要となる注記事項>

1.報告企業

2.作成の基礎

3.重要な会計方針

4.重要な会計上の見積り及び判断

5.事業セグメント

6.配当金

7.金融商品

8.後発事象

出所:IFRSに基づく四半期連結財務諸表の開示例

IAS34号期中財務諸表で記載されている注記項目

 

次に把握すべきなのはIAS34号の期中財務諸表においてどのような項目が開示対象として求められているのかを把握することです。

ここで、若干ややこしいのはIAS34号における期中財務諸表とは、日本の現行の金融商品取引法における開示実務においては、四半期報告書のことであると理解しておけば良いということです。

IAS34号では二つの項目に分けて必要となる注記について記載がなされています。

以下ではそれぞれを紹介しますが、重要なことは、IFRSにおける期中財務諸表の位置付けをきちんと理解しておくことです。

[box05 title=”期中財務諸表の位置付け!”]
IFRSにおいては年次財務諸表があくまでも正であり、期中財務諸表は従である。
期中財務諸表は年次財務諸表のアップデート情報を記載するものであり、年次財務諸表を公表してから、期中財務諸表を公表するまでに発生した新たな事象のうち、年次財務諸表の公表事項をアップデートすべきほど重要であると思われるものを期中財務諸表では開示することになる。
[/box05]

IAS34号期中財務諸表を抜粋

四半期連結財務諸表には、直近の連結会計年度の末日後の企業の財政状態の変動及び業績を理解するうえで重要な事象及び取引についての説明を含めなければならない(15 項)。
四半期連結財務諸表の注記では、直近の連結財務諸表の注記で報告された情報について、比較的重要でない更新を行う必要はない(15A 項)。
ある事象又は取引が前連結会計年度以降の企業の財政状態の変動又は業績の理解に重要である場合には、四半期連結財務諸表は前連結会計年度の連結財務諸表に含まれていた関連する情報の説明及び更新を提供すべきである(15C 項)。

精選された説明的注記

直近の連結会計年度の末日後の企業の財政状態の変動及び業績を理解するうえで重要である場合に開示が求められる事象及び取引のリストは次のとおりであるが、当該リストは網羅的なものではない。

(a) 棚卸資産の評価減及びその戻しいれ
(b) 金融資産、有形固定資産、無形資産、顧客との契約から生じた資産又はその他の資産にかかる減損損失の計上及びその戻しいれ
(c) リストラクチャリング費用に対する引当金の戻しいれ
(d) 有形固定資産項目の取得及び処分
(e) 有形固定資産購入にかかるコミットメント
(f) 訴訟の解決
(g) 前期の誤謬の訂正
(h) 金融資産及び金融負債の公正価値に影響を与える事業又は経済状況の変化
(i) 借入債務不履行又は借入債務契約違反で報告期間の末日以前に解消されていないもの
(j) 関連当事者取引
(k) 金融商品の公正価値測定に使用される公正価値ヒエラルキーのレベル間の振替
(l) 資産の目的又は用途の変更による金融資産の分類の変更
(m) 偶発負債又は偶発資産の変動

 

その他の注記

次の情報を四半期連結財務諸表の注記又は他の箇所に含めなければならず、当該情報は、通常、期首からの累計ベースで報告しなければならない。

(a) 期中財務諸表において直近の年次財務諸表と同じ会計方針と計算方法を採用している旨、又は、それらを変更している場合には、その変更の内容及び影響の説明
(b) 期中の営業活動の季節性又は循環性についての説明的コメント
(c) 資産、負債、資本、純利益又はキャッシュフローに影響を与える事項で、その性質、規模又は頻度からみて異例な事項の内容及び金額
(d) 等事業年度の過去の期中報告期間に報告された金額の見積もりの変更又は過去の事業年度に報告された金額の見積もりの変更の内容及び金額
(e) 負債証券及び持分証券の発行、買戻し、及び償還
(f) 普通株式その他の株式の各々に対する配当金(合計額又は一株あたりの金額)
(g) セグメント情報
(h) 後発事象
(i) 企業結合における企業の構成の変化
(j) 公正価値測定に関する注記、IFRS7号における公正価値の注記に関する事項
(k) 投資事業に該当する企業又はそうではなくなった場合に関しての開示
(l) 顧客との契約から生じる収益の114項から115項で要求されている収益の分解情報

 

IFRSの開示実務で参考になる書籍

 

注記に関して困った事項がありましたら以下の書籍を参考にすると良いと思います。

詳細解説 IFRS開示ガイドブックです。

この本の特徴としては開示のみならず、その背景となるIFRSの基準書の解説や開示の事例が豊富に記載されていることです。

実際、日本語で書かれたIFRSの開示の事例を記載した書籍はあまりないため、貴重な本になると思います。

値段は少しはりますがIFRSを採用した会社の経理担当者にとっては必読の書と言えるでしょう。

終わりに_まとめ

まずは金融庁の開示例においてマストとされている項目を理解しましょう。

その後にIAS34号に記載されている項目が必要となるかについてその時その時に置かれた会社の状況から判断して、記載する必要の有無を検討することが求められていることを理解しましょう。