【収益認識に関する会計基準を読む!】ライセンス売買の収益認識について検討を加えるの巻

2018年3月30日に収益認識に関する会計基準がASBJより公表されました。 さらに、収益認識に関する会計基準の適用指針も公表されています。

基本的には従前の会計実務に大きな変更を求めるような基準ではない、ということがいろいろなメディア等で述べられていますが、果たして本当にそれは正しいのでしょうか。

実際に基準の文言を読んでみると、意外にも従前の会計処理とは異なる可能性がありそうだということがわかってきます。

そこで、本サイトでは収益認識に関する会計基準を読む!と称して、ポイントとなりそうな箇所について、よりわかりやすく、実務に適用できる形で紹介していこうと考えております。 趣旨としては、会計媒体があまり書きそうにないレベルまでなるべく踏み込むことで、実務を担う人への後方支援を行うことです。

第1回目として、ライセンスの供与に関する収益認識について取り上げることとします。 なぜ、これを取り上げたかというと、一読しただけでは本当に理解できなかったためです笑。

ライセンスの供与に関する収益認識の会計処理

まず、ライセンスの供与に関する収益認識の会計処理については、収益認識に関する会計基準の適用指針61項を読むことからスタートします。 収益認識に関する会計基準の適用指針61項を引用します。

(6)ライセンスの供与

61. ライセンスは、企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものである。ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものでない場合には、ライセンスを供与する約束と当該他の財又はサービスを移転する約束の両方を一括して単一の履行義務として処理し、会計基準第 35 項から第 40 項の定めに従って、一定の期間にわたり充足される履行義務であるか、又は一時点で充足される履行義務であるかを判定する。

62. ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであり、当該約束が独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、顧客に次の(1)又は(2)のいずれを提供するものかを判定する(第 66 項参照)。 (1) ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利([設例 25]) (2) ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利([設例 23] 及び[設例 24-2]) ライセンスを供与する約束については、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が (1)である場合には、一定の期間にわたり充足される履行義務として処理する。 企業の約束の性質が(2)である場合には、一時点で充足される履行義務として処理し、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できるようになった時点で収益を認識する。

まず、61項で重要なことが宣言されます。 62項が謎の文章になっています笑。 ライセンスの特徴を分類することを提案しているのですが、

①ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利 ②ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利

この違いって一体なに???笑 となりますよね。 以下でそれぞれ具体的に見て行きましょう。 ただ、一応ディスクレーマーを書いておきますね笑。 以下の解説では、現時点で基準を読んだ限りにおいて筆者が感じたものであり、最終的な会計処理の判断は監査法人および公認会計士との相談の上決定してください。     具体的な例としては、

ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利

 

これだけを読んで即座に内容を理解できる人はおそらく会計士でもそう多くはないと思われますね笑。

 

分かりやすく、すごく簡単に言ってしまえば、ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利ということが意味することは、ライセンスを提供する企業が継続的に何らかの努力を行うことで、ライセンスの元となるデータや情報などを強化し続けることで、顧客のニーズを満たすようなサービスを提供しているケースです。

 

もっと分かりやすい日常用語で理解するならば、顧客が求めているのはライセンスを有する企業の継続的な努力によって初めて満たされるようなものであること、といえそうです。

 

つまり、企業が継続的に何かデータベースにせよ、情報にせよ、せっせとアップデートを行い、その結果として顧客の期待が満たされるということになるようなものをここでは想定しています。

 

例として、企業の業績などをベースにして、同業比較などの情報を提供する会社があった場合に、その会社の顧客となるユーザーとしては、常に最新の企業の業績がデータベースに保管されており、かつ、そのデータベースを用いて分析される内容に価値を見出しているはずです。

 

このようなケースの場合は、企業は顧客のニーズを満たすために、継続的に努力を行う必要があります。

 

この継続的に努力を行う必要がある、ということが履行義務の考えに繋がり、常に顧客が求める水準にするための努力を行うことが履行義務となるため、ライセンス期間にわたって収益認識を行うことになります。

 

次のライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利の場合の説明をしてから、両者を比較することで解説してみたいと思います。  

ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利

これに対して、②ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利は、ライセンスを提供する企業の事後の努力は不要で当該企業が努力しようが何しようがライセンスの価値に変化がないものと言えます。

ライセンスを提供する企業は一度ライセンスの使用を許諾してしまえば、追加的な義務は存在ない場合が該当します。 わかりやすい例で言えば、マイクロソフトのWordやExcelでしょう。 これらは、アップデートはされるでしょうが、アップデートを受け入れなくても使用することができます。

むろん、OSのアップデートによって実質的にはWordやExcelも古いバージョンが使えなくなることもあるでしょう。

しかし、あくまでも毎日用のマイクロソフトがなんらかの具体的な努力をユーザーに対して行わない限り、Wordが使えないということもありません。  

 

  (企業の約束の性質の判定)
63. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、次の(1)から(3)の要件のすべてに該当 する場合には、顧客が権利を有している知的財産の形態、機能性又は価値が継続的に変化 しており、前項(1)に定める企業の知的財産にアクセスする権利を提供するものである ([設例 23]、[設例 24-2]及び[設例 25])。 (1) ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を 企業が行うことが、契約により定められている又は顧客により合理的に期待されてい ること(第 65 項参照) (2) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が 直接的に影響を受けること (3) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、 企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと
64. 前項のいずれかに該当しない場合には、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、 第 62 項(2)に定める企業の知的財産を使用する権利を提供するものである。
65. 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、企業の活動は、第 63 項(1)に定める顧 客が権利を有している知的財産に著しく影響を与えるものとする([設例 25])。 (1) 当該企業の活動が、知的財産の形態(例えば、デザイン又はコンテンツ)又は機能 性(例えば、機能を実行する能力)を著しく変化させると見込まれること (2) 顧客が知的財産からの便益を享受する能力が、当該企業の活動により得られること 又は当該企業の活動に依存していること(例えば、ブランドからの便益は、知的財産 の価値を補強する又は維持する企業の継続的活動から得られるかあるいは当該活動 に依存していることが多い。) 66. 第 62 項に定めるライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたっては、 次の(1)及び(2)の要因を考慮しない。 (1) 時期、地域又は用途の制限 (2) 企業が知的財産に対する有効な特許を有しており、当該特許の不正使用を防止する ために企業が提供する保証     結論の背景 (5)ライセンスの供与 143. 知的財産のライセンスには、例えば、次のものに関するライセンスがある。 (1) ソフトウェア及び技術 (2) 動画、音楽及び他の形態のメディア・エンターテインメント (3) フランチャイズ (4) 特許権、商標権及び著作権 144. 顧客との契約が、財又はサービスを移転する約束に加えて、ライセンスを供与する約束 を含む場合には、他の種類の契約と同様に、会計基準第 32 項から第 34 項の定めに従って、 当該契約における履行義務を識別する(第 61 項及び第 62 項参照)。 145. 本適用指針では、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、企業の知的財 産にアクセスする権利と企業の知的財産を使用する権利のいずれを提供するものかを判 定する(第 62 項参照)ことを求めており、そのための要件を定めている。当該要件は、厳 密には支配に係る定めに従ったものではないが、企業の約束の性質を識別しない場合には、 ライセンスを供与する約束における財又はサービスに対する支配を顧客がいつ獲得する か判断することが困難であることを踏まえ、ライセンスを 2 つの種類に区分するために定 めている。 146. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が、ライセンス期間にわたり存在する企業 の知的財産にアクセスする権利である場合(第 62 項(1)参照)には、企業の知的財産への アクセスを提供するという企業の履行からの便益を、企業の履行が生じるにつれて顧客が 享受する(会計基準第 38 項(1))ため、ライセンスを供与する約束を一定の期間にわたり 充足される履行義務として処理する。 147. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が、ライセンスが供与される時点で存在す   る企業の知的財産を使用する権利である場合(第 62 項(2)参照)には、当該知的財産はラ イセンスが顧客に供与される時点で形態と機能性の観点で存在しており、その時点で顧客 がライセンスの使用を指図し、当該ライセンスからの残りの便益のほとんどすべてを享受 することができるため、ライセンスを供与する約束を一時点で充足される履行義務として 処理し、履行義務が充足される時点を会計基準第 40 項に基づき判断する。 この場合、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できる期間の開始 前には収益を認識しない(第 62 項参照)。例えば、ソフトウェアの使用に必要なコードを 顧客に提供する前にソフトウェアのライセンス期間が開始する場合、コードを提供する前 には収益を認識しない。 148. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたっては、その時期、地域 又は用途の制限は、約束したライセンスの属性を明確にするものであり、履行義務を一定 の期間にわたり充足するのか又は一時点で充足するのかを明確にするものではないため、 考慮しない。 また、特許の不正使用を防止するという約束は履行義務ではなく、そのための活動は企 業の知的財産の価値を保護し、供与されるライセンスが契約で合意された仕様に従ってい るという保証を顧客に提供するものであるため、知的財産に対する有効な特許の不正使用 を防止するために企業が提供する保証も、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質を 判定するにあたって考慮しない(第 66 項参照)。 (企業の約束の性質の判定) 149. ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業 が行うことが、顧客により合理的に期待されていること(第 63 項(1)参照)を示す可能性 のある要因としては、企業の取引慣行や公表した方針等がある。顧客が権利を有している 知的財産についての企業と顧客との間での経済的利益の共有(例えば、売上高に基づくロ イヤルティ)の存在も、企業がそのような活動を行うことが、顧客により合理的に期待さ れていることを示す可能性がある。 150. 顧客が権利を有している知的財産が重要な独立した機能性を有する場合には、当該知的 財産の便益の実質的な部分が当該機能性から得られるため、顧客が知的財産からの便益を 享受する能力は、企業の活動が知的財産の形態又は機能性を著しく変化させない限り、企 業の活動による著しい影響は受けない。重要な独立した機能性を有することが多いライセ ンスには、例えば、ソフトウェア、薬品の製法、並びに映画、テレビ番組及び音楽作品の 録音物等のメディア・コンテンツがある(第 65 項参照)。