KAMとは何か?KeyAuditMatters(監査上の主要な検討事項)について理解しよう!

いま会計士業界ではKAM(Key Audit Matters)がアツい議論となっています。

そこでKAMとは何かということをざっくり理解することを目標に本稿を記載することとします。

KAMとは何か?

KAMKey Audit Mattersの略です。

 

日本語では監査上の主要な検討事項と呼ばれていますね。

 

一般に現代の監査ではリスクアプローチという考えが徹底されており、財務諸表を全て舐めるように検討するのではなく、企業そのものの理解やビジネスの理解、内部統制の理解を通じて、特に検討しないといけない事項を絞った上で、監査を行なっています。

 

そのような特に検討をしないといけないと判断した事項を外部の投資家等にも共有すべきであるという考えがKAMが必要となると判断した根拠になっているようです。

 

KAMはなぜ必要となったのか?

従来、監査報告書は定型文での表現となっていました。

 

いや、正確に言えば会計士が一番最初に監査報告書を発行した時代は監査報告書は企業ごとに独自の記載ぶりとしていました。

 

しかし、ここに批判が生じて、定型文としたのです。

 

これは、監査論的には以下のように説明しておりました。

 

監査報告書を自由に記載する方式になると、監査人は責任逃れのために、不必要なディスクレーマーを記載したりするおそれがあるので、定型文のみしか許さない。

 

定型文を言えるようにするために必要な監査手続を考えるべきである、という考えのもとで監査報告書は定型文となっていました。

 

しかし、これに対して、新たな批判が生じました。

 

定型文のみでは監査人が何をしているのかわからないというものです。

 

世界には様々な企業があって監査手続も企業によっていろいろと変わるはずである。

 

それなのに、監査人の唯一のアウトプットであると言っても良い監査報告書が全ての会社で定型的に発行されるのは投資家のためになっているとは言えないのではないか、という指摘がなされたのです。

 

そこで、定型文とはしつつも、監査人が監査において重要と判断した事項についてどのようなリスクを認識して、どのような監査手続を実施したのか、さらにその結果はどのようなものだったのかについて記載することとしたのです。

 

[box04 title=”監査報告書の変遷”]
①企業ごとに自由に記載していた。

②全ての企業に対して定型文とする。

③定型文とはするけども、ある程度自由に記載する余地を作ることにした
[/box04]

KAMの事例にはどんなのがあるのか?

KAMの事例はこちらを参考にされるのが良いかと思います。

 

日本公認会計士協会が発行しているものですので、信頼性は高いです。

 

[box04 title=”KAMの事例はこちら!”]

👉KAMの事例 出所:日本公認会計士協会

[/box04]

 

KAMの実務上の問題点とは?

KAMの導入に伴って生じる実務上の問題点とは何でしょうか?

 

すぐに思いつくことができるのは、どこまでをKAMとして開示することができるのか、という点でしょう。

 

そもそも、KAMは上述の通り、監査報告書のテンプレート化に対するアンチテーゼとして導入が叫ばれたものでした。

 

しかし、実務的には会計監査人は守秘義務を追っている立場であり、その意味ではむやみやたりに外部に対して情報を開示する立場にはありません。

 

あくまで企業ディスクロージャー制度は会社がどのレベルで外部に開示するかを決定することにそのスタートラインがあります。

 

このうち、あらゆるステークホルダーにとって有意味であると考えられる事項を定型化し開示することを義務付けたのが会計基準となるのです。

 

この意味で会計基準は本来企業と投資家等のステークホルダーが個々でどこまでの情報を開示すべきかを交渉するために生じるコストを低減させるための工夫である、とも言えるでしょう。

 

少し話がそれましたが、KAMがすでに導入されているイギリスでも同様の問題は生じているようです。

 

つまりKAMのテンプレート化が進んでいるのです。

 

イギリスでもテンプレート化が進むということはいかにKAMが実務で運用することが難しいのかを示す好例と言えるかもしれません。

終わりに_KAMって意味あるの?

KAMについては理解できたでしょうか?

 

正直なところ、企業からすると、会社の知られたく内容を外部に公表されるリスクがあるのであまり歓迎とは言えないと思います。

 

これに対して監査人側というと、おそらく同様に歓迎とは言えないと思います。

 

現在の監査人は規制当局からの様々なレギュレーション対応などですでに仕事量は大幅に増加している中で、さらに追加で作業が増加しそうな施策なKAMの導入には慎重にならざるを得ないでしょう。

 

これが真に投資家のためになるということが自明であれば、社会的には一定のコストを支払ってもやる意味はあるのでしょうが、投資家の意思決定に有用であるかどうかはおそらくまだそこまで証明されていないと思います。

 

この意味では現在の会計学で主流となっている実証分析の結果を待ちたいと思います。

 

<追記:2019年2月14日>

上述したタイミングではKAM自体には意味がないのではないかというニュアンスで筆をとりましたが、昨今のESGに対する意識の高まりや、コーポレートガバナンスに関する関心の高まりが、実は欧米系の機関投資家によって求められているのだ、ということの理解が広まってきています。

そして、世界的にパッシブ投資の比率が高まっており、パッシブ投資ではETFに組み入れるかどうかの検討は行いますが、一度組み入れられた場合は、その後に詳細にモニタリングが行われるということはありません。

この意味で、ETFを組成する機関投資家は組成する段階で当該企業がESGに対してどのような姿勢なのかを調べることで相対的にリスクをヘッジするようになってきています。

つまり、ESGに対する配慮をきちんと行い、企業外部に対してそのような姿勢や考えを発信していくことが企業価値の向上に大きく寄与する可能性があるのです。

こうした観点からはKAMの監査報告書に記載するとともに、監査役等との適切なコミュニケーションを通じて、ESGに対する適切な配慮が行われている企業であるという認識がなされるのかもしれません。

このような文脈で理解するとKAMも大事な位置付けを担う存在であると言えそうです。